雇用ベースのグリーンカード申請は長期間のプロセスとなる場合があります。当該申請がEB-1A、EB-2 NIWまたはEB-5の分類に基づき提出されたものでない限り、申請者は、PERMと呼ばれる労働証明プロセスを経る必要があります。また一定の申請者には、Form I-140(またはForm I-526)の提出後、Form I-485を提出するまでに待機期間がある場合があります。また一般に、USCISがI-485を裁決するには、少なくとも数ヶ月はかかることになります。
この待機期間中、申請者を取り巻く状況は変わることがあります。移民の地位調整の申請者は、職場が移転したり、新しい仕事の機会を見つけるかもしれません。この場合、当該申請者は、そのForm I-485の審査係属中に転職することはできるのでしょうか。雇用主の変更は、Form I-485申請の却下につながるのでしょうか。
仕事の移行性:AC21
原則として、Form I-485とそのベースとなるForm I-140は、申請者である雇用主による特定の仕事のオファーに紐付けられています。このため、転職をする申請者が地位の調整をするためには、新規の雇用主により提出される新規のForm I-140申請が必要となります。
もっとも、当該申請者がImmigration and Nationality Act(“INA”)のsection 204(j)に規定される要件を満たす場合、この移民の地位の調整の申請者は転職をすることができ、かつ前職の雇用主により提出された Form I-140申請をその地位の調整のために使用することができます。
2000年に、いわゆるAC21(The American Competitiveness in the Twenty-First Century Act of 2000)は、INAのsection 204(j)を追加規定しました。この目的は、雇用ベースの移民の地位の調整申請手続きの遅延に対応することにあります。これにより、そのような遅延を経験している一定の移民の地位の調整申請者は、そのForm I-485の審査係属中に転職することが認められます。
すなわち、移民の地位の調整申請者がINA 204(j)の適格性を有する場合、そのForm I-140(及び、該当する場合はそのベースとなる労働証明)は、仕事の変更にかかわらず、有効なままとされます。そのような申請者は、当該Form I-140の対象となる仕事のオファーと同一または同様の職業分類における適格性のある新規の仕事のオファーへ移行することができます(「仕事の移行性」)。
この新規の仕事のオファーは、現在と同一または自営を含む新規の雇用主から来るもののいずれも対象となります。そのベースとなるForm I-140申請を新規の仕事または雇用主に「移行」できた移民の地位の調整の申請者は、そのベースとなるForm I-140申請の優先基準日を保持することになります。
仕事の移行性の要件
仕事の移行性の適用対象となるためには、移民の地位の調整の申請者は以下の条件を満たす必要があります。
- その申請者が、承認されたまたは最終的に承認される審査係属中のForm I-140申請の受益者であること
- その申請者が、Form I-140申請を、雇用ベースの分類(EB-1、EB-2またはEB-3。EB-1A及びEB-2 NIWを除く)に基づき提出したこと*
- その申請者のForm I-485申請が、USCISが仕事の移行のリクエストを受領したときに180日以上審査係属中であること
- その申請者が移民の地位の調整を求める根拠となる新規の仕事のオファーが、前職の雇用主により提出されたForm I-140に特定される仕事と同一または同様の職業分類にあること、及び
- その申請者がUSCISに対し、仕事の移行のリクエスト(Form I-485 Supplement J:Confirmation of Bona Fide Job Offer or Request for Job Portability Under INA Section 204(j))を提出したこと
*仕事の移行性は、承認されたForm I-140申請がEB-1A(卓越した能力の保有者の分類)またはEB-2 NIW(USCISが米国の国益のために仕事のオファー及び労働証明の取得要件を免除した者)に基づく移民の地位の調整申請者には適用されません。これらの申請者は、AC21に基づく仕事の移行性の適用対象とはならず、自営業を始めることを含め、雇用主を変更することができます。
承認されたForm I-140の要件及び例外
前述の通り、仕事の移行性の適用対象となるためには、移民の地位の調整の申請者は、承認されたForm I-140または審査継続中であって最終的に承認されるForm I-140を保持している必要があります。
従って、USCISは、Form I-140申請の承認の前後に以下の事態が生じた場合、 原則として仕事の移行性を否定することになります。
1 USCISが承認されたForm I-140申請を撤回した場合
USCISがForm I-140申請の承認を撤回した場合、移民の地位の調整の申請者は、仕事の移行性の適用対象とはなりません。
2 USCISが、審査係属中のForm I-140申請に関し、申請者から撤回の通知を受領した場合
もっとも、審査係属中のForm I-140申請が承認可能であり、Form I-485が180日以上審査係属中の場合:
- そのForm I-140は優先基準日の維持の目的では有効なままであり、
- その移民の地位の調整申請者はまた、仕事の移行性の適用対象となります。そのForm I-140申請が追って承認された場合、この承認は重大な理由によりUSCISがこれを撤回するまでは有効なままとなります。
3 USCISが、承認されたForm I-140申請に関し、申請者から撤回の通知を受領した場合
もっとも、USCISが申請者から撤回のリクエストの通知を(a)Form I-140申請の承認から180日以降、または(b)Form I-485申請が180日以上審査係属中に受領した場合:
- そのForm I-140は優先基準日の維持の目的では有効なままであり、
- その移民の地位の調整の申請者はまた、(USCISがその承認を重大な理由に基づき撤回しない限り)新規の同一または同様のポジションに基づき仕事を移行するための全ての要件を満たし、その移民の地位の調整申請がその撤回の際に180日以上審査係属中である場合に、仕事の移行性の適用対象となります。
4 Form I-140の審査係属中に申請者の事業が終了した場合
もっとも、審査係属中のForm I-140申請が承認可能であり、Form I-485が180日以上審査係属中の場合:
- そのForm I-140は優先基準日の維持の目的では有効なままであり、
- その移民の地位の調整申請者はまた、仕事の移行性の適用対象となります。そのForm I-140申請が追って承認された場合、この承認は重大な理由によりUSCISがこれを撤回するまでは有効なままとなります。
5 Form I-140の承認後に申請者の事業が終了した場合
もっとも、(a)Form I-140申請の承認から180日以降、または(b)Form I-485申請が180日以上審査係属中に申請者の事業が終了した場合:
- そのForm I-140は優先基準日の維持の目的では有効なままであり、
- その移民の地位の調整の申請者はまた、(USCISがその承認を重大な理由に基づき撤回しない限り)新規の同一または同様のポジションに基づき仕事を移行するための全ての要件を満たし、その移民の地位の調整申請がその事業の終了の際に180日以上審査係属中である場合に、仕事の移行性の適用対象となります。
仕事の移行のリクエスト方法
移民の地位の調整の申請者は、USCISに対しForm I-485, Supplement Jを提出することで、仕事の移行のリクエストをすることができます。
この申請者は、Form I-485が180日間審査係属中である場合に、仕事の移行をリクエストすることができます。この期間には、Form I-140申請の撤回のリクエスト後の移民の地位の調整申請に関する面接の期間またはUSCISから送付された通知(例:追加の証拠請求)への回答期間が含まれます。
仕事の移行をリクエストするためには、申請者は以下の書類をあわせて提出する必要があります。
- Form I-485の受領日を示すForm I-797(Notice of Action)及び
- 申請者が承認されたまたは審査係属中のForm I-140申請の主たる受益者であることを示すForm I-797(Notice of Action)
USCISによる裁決
仕事の移行のリクエストを裁決する際、USCISは、新規の仕事のオファーが従前のForm I-140.に記載される仕事と同一または同様の職業分類であるか否かを決定するために、申請者の状況を総合的に検討します。
新規の仕事のオファーが当該要件に満たないと判断した場合、USCISは移民の地位の調整申請を却下します。この場合、当該申請者は、移民の地位の調整を受けるためには、Form I-140申請を新規の雇用主を通じて提出するか、あるいはこれを自己申請する必要があります。
さらなる詳細については、USCISのウェブサイトをご参照ください。 (関連リンク)。.