従業員のH-1Bビザをスポンサーする雇用主は、そのビザの申請に関し、USCIS費用と弁護士費用を支払う必要があります。H-1Bビザに基づき従業員を雇用するに際し、当該雇用主はまた、H-1Bビザの従業員に対し、法律により要求される賃金レートを支払う必要があります。
USCIS申請費用
USCIS申請費用は、申請者である雇用主の種類、雇用主の従業員の人数及び種類、申請の種類(例:初回のH-1B申請、H-1Bステータスの延長)、当該申請がH-1Bビザの上限規制対象となるか、及びプレミアム処理に関する選択により異なります。
一般に、USCIS申請費用は、初回のH-1B申請の場合およそ$500から$8,970の範囲となり、以下の費用により構成されています。
1. 電子登録費用:$10(上限規制対象のH-1B申請のみ)
電子登録費用は、H-1Bビザの上限規制の対象となるH-1Bビザ申請に適用されます。2020年に、USCISは、上限規制の対象となるH-1Bビザについて電子登録手続きを導入しました。これにより、高度な学位による上限規制の一定数までの免除の対象となるH-1B受益者に関する申請を含め、上限規制の対象となるH-1Bビザを申請する雇用主は、電子登録を行うほか、$10の電子登録費用を各H-1Bビザの受益者につき支払う必要があります。
USCISは、毎会計年度に少なくとも14暦日の期間に渡り初回の電子登録期間を設定します。USCISはその後、適切に提出された電子登録について、H-1Bビザの抽選手続きを行います。上限規制の対象となるH-1Bビザ申請については、この抽選により選出された登録者のみ、同申請を当局に提出することができます。
2 Form I-129(非移民就労者のための申請)申請費用:$460
Form I-129の申請費用は以下の種類の申請に適用されます。
- 初回のH-1Bビザ申請
- H-1Bへの地位の変更
- H-1Bビザの雇用主の変更
- H-1Bビザの延長の申請
- H-1Bの修正申請
この申請費用は、申請の結果にかかわらず、返金不可とされています。この費用はまた、申請者が申請を撤回した場合でも、返金されません。
3 ACWIA(American Competitiveness and Workforce Improvement Act)費用: $1,500/$750
ACWIA費用は、その雇用主の従業員の数により、以下の通り異なります。
- $1,500(雇用主が25人より多くのフルタイムのH-1B受益者と同等の従業員を有する場合)
- $750(雇用主が25人以下のフルタイムのH-1B受益者と同等の従業員を有する場合)
雇用主がこの費用を支払う必要があるか否かについて決定する際、雇用主は、その米国の関連会社または子会社も含め、そのH-1B受益者と同等の米国に所在するフルタイムの従業員をカウントする必要があります。
ACWIA費用は以下の種類の申請に適用されます。
- 初回のH-1Bビザ申請
- H-1Bへの地位の変更
- H-1Bビザの雇用主の変更
- 初回のH-1Bビザの延長申請
ACWIA費用は以下の種類の申請には適用されません。
- 滞在期間の延長のリクエストを含まないH-1Bの修正申請
- 2回目以降のH-1Bビザの延長申請
- USCISによるエラーの修正のみを目的とする申請
これに加え、ACWIA費用は、H-1Bビザをスポンサーする雇用主が以下に該当する場合は適用されません。
- 高度な教育機関
- 高度な教育機関に関連するまたは連携している非営利団体
- 非営利団体または政府の研究機関
- 初等教育または中等教育機関
- 学生のために設立されたカリキュラムに関連する臨床研修プログラムに関わる非営利団体
4 Anti-Fraud費用:$500
Anti-Fraud費用は以下の種類の申請に適用されます。
- 初回のH-1Bビザ申請
- H-1Bへの地位の変更
- H-1Bビザの雇用主の変更
Anti-Fraud費用は以下の種類の申請には適用されません。
- H-1Bビザの延長の申請
- H-1Bの修正申請
5 Public Law 114-113費用:$4,000(該当する場合)
Public Law 114-113費用は、米国において50人以上の従業員を雇用し、その従業員の50%以上がH-1BまたはL-1ステータスにいる雇用主に適用されます。
雇用主がこのPublic Law費用を支払う必要があるか否かについて決定する際、雇用主は、全てのフルタイム及びパートタイムの従業員をカウントする必要があります。関連会社の従業員はカウントされません。
これに加え、H-1BまたはL-1ステータスの従業員の割合を計算する際には、雇用主は、それらの従業員が米国または米国外のペイロールにより給与の支払いを受けているかにかかわらず、米国に所在する従業員の数に基づき計算する必要があります。
Public Law 114-113費用は、anti-fraud費用が適用される場合に同様に適用されます。
従って、Public Law費用は以下の種類の申請に適用されます。
- 初回のH-1Bビザ申請
- H-1Bへの地位の変更
- H-1Bビザの雇用主の変更
Public Law費用は、以下の種類の申請には適用されません。
- H-1Bビザの延長の申請
- H-1Bの修正申請
このPublic Law費用は、2015年12月8日以降に提出された申請に適用されます。この費用は、2027年9月30日まで適用されます。
6 プレミアム処理費用:$2,500 (オプション)
プレミアム処理は、H-1BのためのForm I-129申請の処理を迅速化をもたらします。USCISは、このサービスを使用する申請者に対し、15暦日内の処理を保証しています。15暦日以内に処理がなされない場合、USCISは、プレミアム処理費用を返還し、迅速な処理を継続します。
他の費用と異なり、USCISは、スポンサーである雇用主またはH-1B従業員のいずれかがこのプレミアム処理費用を支払うことを認めています。一般に、プレミアム処理がスポンサーである雇用主の利益のためにリクエストされた場合、当該雇用主がプレミアム処理費用を支払うことになります。プレミアム処理は、現在全てのH-1B申請について利用可能です。
領事館・大使館申請費用
H-1Bの従業員がアメリカ国外にいる場合、さらに領事館または大使館での申請費用(現在205ドル)が必要となります。
弁護士費用
スポンサーである雇用主はまた、H-1B申請にかかる弁護士費用を支払う必要があります。この費用は地域または弁護士費用の種類(例;時間制または定額制)により異なります。一般に、弁護士費用は数千ドルかかることが想定されます。
H-1B従業員の賃金要件
最後に、H-1Bの従業員をスポンサーする雇用主は、その従業員に対し、以下の賃金のうちいずれか高い方の額を少なくとも支払う必要があります。
- 同様の適格性のある従業員に支払われる実際の賃金、または
- H-1B従業員が就労する地域における当該ポジションに支払われる普遍的な賃金
実際の賃金
実際の賃金とは、その勤務地における特定の雇用に関し、そのH-1Bビザの受益者である従業員の経験及び適格性と同様の経験及び適格性を有する全ての個人に対しスポンサーである雇用主が支払う賃金レートを指します。 もし同様に雇用された従業員がいない場合は、実際の賃金は、そのH-1B従業員に対し支払われる賃金となります。
普遍的な賃金
普遍的な賃金とは、その雇用の地域における当該職業分類に対し以下により設定される賃金レートを指します。
- 当該職業に適用される賃金レートを含む労働組合契約、または
- 労働組合契約の対象とならない職業については、その雇用の地域において同様に雇用される従業員(例:当該職業分類において実質的に比較可能な仕事に従事している従業員)に支払われる加重平均賃金
一般的な普遍的賃金の情報元は、各州で運営しているState Workforce Agencyとなります。
その他の賃金要件
スポンサーである雇用主がH-1Bの従業員に対し法律で要求されるより少ない額の賃金を支払う場合、 米労働省は、聴聞の機会を与えた後に、当該雇用主に対し要求される賃金レートを支払うよう命令することができます。
これに加え、スポンサーである雇用主は、そのForm I-129で報告した保証された最低時間につき、例えその H-1B従業員に仕事が与えられない場合であっても、賃金を支払う必要があります。もっとも、 H-1B従業員が自発的な休暇等の仕事に関わらない理由により利用不可能である場合、当該雇用主はその保証された最低時間につき賃金を支払う必要はありません。
H-1B従業員の帰国費用
H-1B従業員の雇用主は、その従業員のH-1Bビザでの滞在許可期間の終了前にその従業員を解雇した場合、当該従業員の国外への帰国に関し適正な費用を支払う責任を負います。当該従業員がそのH-1Bのステータスが失効する前に自発的に雇用を終了した場合は、この帰国費用の支払いが必要となる解雇にはあたりません。ここに言う「国外」とは、その従業員のアメリカ外の最後の居住地を指します。