H-1Bビザに基づき自営業の独立コンサルタントとして働くことは可能ですか?答えは一般にノーとなります。H-1Bビザは米国の雇用主のスポンサーシップを必要とする雇用ベースのビザにあたるためです。自営業の独立コンサルタントは、独立請負人とみなされます。このため、要求される雇用主からのスポンサーシップの要件を満たさないことになります。
もっとも、H-1Bビザのスポンサーシップを受ける個人(受益者)が自身の会社をそのビジネスのために所有している場合、当該会社からその従業員としてH-1Bビザのスポンサーシップを受けることで、その受益者はH-1Bビザを取得できる場合があります。このためには、当該会社は以下の一定の条件を満たす必要があります。
1 雇用関係の存在を当該会社が証明すること
まず、当該会社は、その会社とH-1Bビザの受益者との間に雇用主・従業員としての関係があることを証明する必要があります。この証明のためには、当該会社は、以下の条件を満たす必要があります。
会社の所有と管理の間に明確な区別が存在すること
雇用主として、当該会社は、H-1Bビザの受益者の雇用、解雇、監督またはその仕事を管理する権限を有する必要があります。要するに、当該会社は、その受益者の他に、受益者の仕事を管理する第三者の存在があることが必要となります。そのような第三者の例には、取締役、投資家または優先株主が含まれます。受益者は、そのような第三者を代替したり、その決定を直接または間接的に覆す権限を有してはなりません。
当該会社がコンサルティング会社の場合、その所有と管理の分離を証明するための関連要素には、その会社が受益者の給与の支払い者か、受益者の職場の場所及び移転を決定するか、または受益者の勤務評価、研修及びカウンセリング等の管理監督を行うか等が含まれます。
2020年のUSCISのポリシーメモ
2020年に、USCISは、2010年と2018年にそれぞれ発行された旧メモを撤回する新規のポリシーメモを公表しました。このポリシーについてはこちらから確認可能です。 (関連リンク)。この新規のポリシーは、中でも、以下について規定しています。
- USCISの担当官は、H-1Bビザの申請者が、H-1Bビザの受益者である従業員の「雇用、解雇、監督またはその他の仕事の管理」要素の少なくとも一つを満たすことを証明したかについて検討すること
- USCISは、H-1Bビザの申請者に対し、その雇用主・従業員の関係または投機的な雇用でないことを証明するために、当該ビザの受益者と第三者(例:最終的なクライアント及び中間の業者)間の契約または法的合意書の提出を要求しないこと。もっとも、USCISは、申請者がその提出を選択する場合に、その契約書または法的合意書の連鎖を検討します。
- エージェントがH-1Bビザを申請する場合を除き、USCISは、H-1Bビザの申請者に対し、H-1Bビザの受益者である従業員が複数の勤務地に配属される場合にその業務の日程表の提出を要求しないこと
所有と管理の分離の証明書類
受益者による当該会社の所有と第三者による同会社の管理の分離を証明するために、申請者はその分離を示す書類を提出する必要があります。この書類には以下の書類が含まれます。
- 内規
- 株式取得契約
- 株主間契約
- 事業運営契約
- 組織に関する書面
- 仕事のオファーレター
- 当該会社と受益者間の雇用契約
- 投資家の権利に関する契約
- 勤務評価手続きに関する書面
- 第三者による受益者の雇用、解雇、監督またはその他の仕事の管理権限を示すその他の書類
当該会社が真正な目的で設立されたこと
受益者のH-1Bビザをスポンサーする目的のみで当該会社が設立されたとUSCISがみなす場合、当該ビザ申請は却下されることが想定されます。 同様に、その受益者がその会社の主たる投資家であって受益者が解雇された場合に、当該会社は倒産せずに存続する必要があります。
2 当該会社がH-1Bビザ申請の全ての一般的要件を満たすこと
これに加え、当該会社は、以下を含むH-1Bビザ申請の全ての一般的要件を満たし続ける必要があります。
- 受益者が学士号またはより高度な学位を要求する専門的職業における一時的な就労目的で米国に来ることを証明すること
- 受益者が当該専門的職業においてサービスを提供する適格性があることを証明すること
- 実際の賃金レートまたはその地域及び職業における普及賃金レートのいずれか高い方である受益者の賃金レートを含め、受益者の雇用条件を記載したLabor Condition Application (LCA) の証書を取得すること
- 受益者の雇用条件に重大な変化がある場合に修正されたまたは新規の申請を当局に提出すること(対応するLCAが米労働省により証明されることを要求する地域への勤務地の変更など)
当該会社が受益者のためにH-1Bビザを申請した場合、USCISは、状況を総合的に判断して裁決を行います。その際、USCISは、当該会社が適格な雇用関係を証明したかについて決定するために提出された全ての証拠を検討します。
当該会社がその雇用関係が存在し及び/または存続するであろうことを証明する十分な証拠を提供しない場合、USCISはその申請を却下することになります。このため、当該会社が受益者のH-1Bビザを申請する際には、十分な証拠を準備し提出することが極めて重要となります。